2024-11-25
大隈昭子
ノーベル賞委員会は、2024年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表しました。
このニュースは世界を駆けめぐり、「核兵器のない世界」を願うすべての人々に限りない励ましと勇気を与えています。
アメリカの原爆投下による「この世の地獄」をかろうじて生きのびた被爆者の皆さんは、その後も後遺症、差別や経済的苦難を強いられ、さらに何の援護もなく放置されました。
しかし、ビキニ水爆実験被災(1954年)を契機に原水爆禁止運動が広がるなかで、被爆者自身が「ふたたび被爆者をつくらない」との決意をもって立ち上がり、1956年に「自らを救うとともに、私たちの体験をとおして人類の危機を救おうという決意を誓い合った」(結成宣言「世界への挨拶(あいさつ)」)と日本被団協が結成されました。
ノーベル賞委員会のフリードネス委員長は日本被団協への授賞理由として「核兵器のない世界を実現するための努力」と「核兵器が二度と使われてはならないことを目撃証言を通じて示してきたこと」を挙げ、被爆者の地道な努力によって核兵器の使用は道徳的に許されないとする「核のタブー」という国際規範が醸成されたと指摘し、「全ての被爆者に敬意を表したい」と語っています。
国連の中満泉事務次長は、被団協の受賞について「世界に対する強烈なパンチ」だと話しています。
2017年に国連で採択された核兵器禁止条約は、2024年9月現在94か国が批准・参加していますが、世界で唯一の戦争被爆国である日本の政府は、「核兵器禁止条約に核兵器を保有する国々が参加しておらず、日本だけが加わっても核廃絶にはつながらない」との理由で批准・参加に背を向けています。
こうした政府の態度に、被爆者は「本来なら、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約に参加すべきだが、それもしない。さらには、アメリカの『核の傘』に頼り、『核共有』の議論まで起きている。日本政府は、言っていることとやっていることが違う」批判の声をあげています。
こうした現状の中でも、日本被団協の箕牧智之代表委員は、今回の受賞にあたって「引き続き核兵器廃絶、恒久平和の実現を世界の皆さんに訴えていきたい」と話しています。
「核の傘」などというバカげた言い訳を許さず、決意を新たに、「核兵器のない世界」への世論と運動を飛躍させることが求められていると感じています。
●日本被団協ホームページ
現在、ノーベル平和賞授賞式が行われるノルウェーまで被爆者代表団を送る旅費のクラウドファンディングが実施されています。