スタコラ:2023-10-16

コンプリメント~褒める技法

2023-10-16
新開

 旅先で、墨をするというアクティビティに参加しました。
 硯からの懐かしい香りに、書道教室に通っていた小学生の頃を思い出しました。色紙が準備され、その墨で書いた作品を持って帰れるというお土産付きです。
 考えることがたいそう苦手になった86歳の母が、「なんて書く?」と聞いてきます。
 自分で考えたらいいのにと思いつつ、当たり障りのない言葉を探し「いつもありがとう、って書くよ」とこたえると、母も同じにするとのこと。

 下書き用の半紙で練習をし、いざ色紙に。私は、下手を隠すために左手で大きく書き、まずまずの出来と納得。
 70年ぶりぐらいではないかと思われる母も、1枚の色紙に「いつもありがとう」を二つも書いて満足そうです。
 色紙を見比べて「私の方がうまいね」と、自画自賛の母。すかさず「すごい、上手!やるね!」と大きく褒めてみました。それが嬉しかったようで、「楽しかったね~」と何度も繰り返していました。

 臨床心理学では、コンプリメントという褒める技法があります。相手の話したことや考えを肯定的・支持的に評価することです。
 書道の出来に満足し、「私の方がうまいね」と言ったことを、「その通り!すごく上手!」と認められ、母の満足度も急上昇したのかもしれません。
 コンプリメントには、満足のいく未来を作る原動力となる資源に気付かせる効果があると言われています。
 母も、まだまだやれると思ったかもしれません。早々に忘れてしまう可能性大ですが、もうしばらく楽しい時間を一緒に過ごせそうな気がします。

 この時に感じたことは、できていたことが少しずつできなくなる母に厳しくなるのは、娘だからという甘えかもしれないということ。
 身内との対話の中にもセラピスト魂と「いつもありがとう」の気持ちを持って、母の応援も頑張ろうと思えた旅先での出来事でした。

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