2016-08-29
大隈昭子
最近、障がい者の作業所やグループホームを運営する法人から、職員研修など労務管理に関わる相談が相次ぎ、障がい者福祉について考える機会が増えています。
そんな中で、相模原市の障害者施設で、障がい者19人もの命が奪われ、27人が負傷するという凄惨な殺傷事件が起き、大変な衝撃を受けました。
この事件から1か月が過ぎましたが、この間、多くのマスコミでは障がい者を標的とした「ヘイトクライム」であると論評しました。
日本では、このところ障害者権利条約(2014.1批准)や障がい者虐待防止法(2012.10施行)、障害者差別解消法(2016.4施行)など、障がい者の尊厳と権利を保障するための法整備がすすんでいます。
しかし一方では、まだまだ虐待が後を絶たない実態や障がいを理由に差別的取扱いなどが広く残っています。
今回の事件の後、西日本新聞では先の大戦中にナチスが7万人もの障がい者をガス室で殺害した例をあげ「ヘイトスピーチが横行する社会に亡霊を呼び寄せる黒い感情が満ちてはいまいか」と警鐘を鳴らしています。
最近の相談に障害年金の受給に関することがありましたが、この障害年金制度の啓発や知識を広めるための取り組みが非常に遅れていることを痛感しています。
公的年金といえば老齢年金はよく知られ、年金の受給年齢間近になると年金定期便が届くため「60代になれば受け取れる年金」としてほぼ周知されています。
ところが、同じ公的年金である障害年金は、受け取るための条件に該当する方も本人が請求しない限り、通知がくることもありません。
ここにも、2006年の第61回国連総会で決議された「あらゆる障がい者(身体障害、知的障害、精神障害)障害者権利条約」が、8年もかかって世界で141番目に批准されたことに示されるような日本社会の遅れがありはしないかと思われてなりません。