スタコラ:2020-06-08

英語の学習方法

2020-06-08
柿本

はっきりいっておく。わたしは英語が読める。なぜなら若いころ、ビートルズの歌詞を丸暗記したからだ。歌詞に出てくる単語で分からないものがあると、ジョン・レノンが、いったい何を言いたかったのか知りたくて、辞書を引いたものだ。そう、わたしはジョン派である!
もちろん、ポールの作る美しいメロディ、ジョージの作る少し変わったメロディ、リンゴの醸し出す楽し気な歌も好きだが、何といってもジョンが好きなのだ。

ビートルズの有名な曲に、♪ Drive My Car というものがある。一般的にはポールの作品として知られているが、タイトルにもある「Drive My Car」という部分はジョンが助言したらしい。スターになる気まんまんの女が、言い寄る男に(わたしに好かれたいなら)「Baby, you can buy me diamond rings(ダイヤを買ってくれるの)?」と書いていたそうだ。なんて直接的な、もっと言えば陳腐な歌詞だろう(ごめん、ポール)。それをジョンが「わたしの車の運転手になりなさい(そしたら好きになるかもね)」すなわち、「Baby, you can drive my car.」に書き換えたというのだ。かっこいいじゃないか!

このように、好きな英語素材の周辺に触れ、感動と共に覚えた英語はなかなか忘れない。いまでもビートルズ好きの仲間と歌詞について語り合える。「Norwegian Wood」が「ノルウェイの森」と誤訳されているのも有名な話で(翻訳者が認めている)、あれは歌詞全体を見るとどう考えても「森」ではない。こんな知識を自慢げにひけらかすのも、「英語について語れるぜ」という一要素になっている。

昨年、大学受験の英語科目に民間試験を導入する案が延期になった。外国語は現地に住んで恋人でもつくればすぐにマスターできるという説もある。恋人の場合は人間、ビートルズの場合は歌。英語が「好きこそものの上手なれ」を体現する科目であることは明白だ。ほんとうに英語力向上を目指すのなら、若者が好きな音楽やゲーム、スポーツに関するテーマをもっと増やせばいいのではないだろうか?

「長文問題で興味を引くような内容を工夫してたよ!」試験作成者のお叱りの声が聞こえてくるようだ。しかし、これまでの試験問題は、趣味の偏りによる不平等とならぬよう、あまりに哲学的・文学的なテーマが多くはなかったか。考えてほしい。哲学や文学が趣味の人間だっているのだ。お堅いテーマが好きな学生しかいらないというのか?
世界と渡り合えるのはむしろ、もっと今風の趣味や遊びの話題ができる人材ではないのか。好きなことを通じて外国語を自発的に学ぶ喜びを知った人にこそ、伸びしろがあるのではないか。

複数の民間試験を採用するとなると、異なる試験問題でどうやって統一した評価をするのかという課題もある。共通試験をセンターがつくり、マークシートで採点という従来の方法がベストのような気がしてならない。

さて、前述した「Norwegian Wood」だが、最後に「I lit a fire, Isn't it good Norwegian Wood?」というくだりが出てくる。私はこれを「タバコに火をつけた。(この部屋の)ノルウェイ調の家具、なかなかいいじゃないか」というおしゃれな歌詞だと思っていた。念のためにさっき調べてみたら「(朝起きてみたら女がいない。悔しかったので)家に火をつけた。燃える燃える。さすがノルウェー産の木材」という説明を見つけた。ポールがPLAYBOYインタビューで語っていたものだ。あれ?この曲はジョンの作品だったのでは…?

英語サイトを読みまくって、真相を解明せねばならない…。ほら、英語って楽しい!

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