2021-05-24
柿本
かつて、我が国には、ゆるキャラブームが存在した。2005年前後のことである。
ずっと前のコラムで私も熊本のゆるキャラ、くまもんに少しだけふれた。あれから、xx年…(きみまろさんの声で読みましょう)、熱しやすく冷めやすい大衆の性格によってすぐに廃れると思いきや、ポップでアニメな性格も持ち合わせていた私たちはいまも多くのゆるキャラを楽しんでいる。
多くの地方自治体もこぞってゆるキャラを編み出したわけだが、以前、群馬県がゆるキャラ、ぐんまちゃんの「なかの人」を募集した。
ゆるキャラのなかの人…だと…!
ある意味、身もフタも夢もない、ゆるキャラの存在意義そのものに関わってくるコトだと思えるが、まあ色んな熟慮があったのだろう。
「地域活性化協力メンバー」などとお茶を濁さず、「なかの人」を民間から一般公募するのはむしろ、清々しささえ感じられる。
ここでふと疑問がわいた。
「どんな、面接をするんだろう?」
採用される人の最終形態は明らかにぐんまちゃんなのだから、より、理想のぐんまちゃんの動きと所作ができる人が採用されるに違いない。
と、いうことは、大前提として、選考に残った応募者はみな、ぐんまちゃんの着ぐるみを着ていなければならない。高い倍率を勝ち抜いてきた最後の数人が控室に並んで待っている。外見はどこからどうみても全く同じぐんまちゃんだ。面接ルームのドアをノックし、お辞儀をしてイスに座り、面接官の質問に、ぐんまちゃんらしい言葉遣いと動作で答えて(ぐんまちゃん、話せるのか?)然るべきだ…。
なんだか楽しくなってきた。この面接で一番大切なのはキャラを演じ切ることができるかどうかということだ。
翻って考えてみた。一般企業でも、これは同じじゃないのか?
営業でも事務でも、実際に働いている所作を見てみたい。その人が、就業時間中、ビジネスパーソンとしてそれらしく振る舞えるかどうかが大切だ。
ロールプレイングに似ているが…。
いや、そのものなのだ。ロール(役割)をプレイする(演じる)のだから。たとえば次のような質問はどうだろうか。
「すでに会社に入社したと仮定して、これから上司がいくつかあなたに話しかけます。それに答えてください」
漠然としているが、これは実践的なシミュレーションだ。
その人の会社でのキャラクターは周りとの関係で決まる。個別面接でなかなか出来ない圧迫面接も、架空のリスクシーンを想定してこれにどう対応するかを見ることが出来る。真摯なキャラでいくのか、逆ギレするのか。
これを、キャラクター面接、略してキャラ面、と名付ける。
色んな対策本で、面接の訓練をしていても、こういった意表をついた寸劇には役立たないだろう。
ひととなりは、何気ない所作に出るものなのだ。