スタコラ:2021-08-16

選手のインタビュー、聞いてどう?

2021-08-16
高尾

多くの感動をもらった東京オリンピックがコロナ禍の中、8/8 に終了。
世界スポーツの祭典という名にふさわしく多くの競技を観て、時にこぶしを握り、時に声を上げ、時に涙し、と多くの感動シーンが。
何年も鍛錬を積み重ねてきた成果が一瞬で試されるもので、最高の成果もあれば非情なものもありましたね。
この感動をもらった全てのオリンピアンに感謝しながら気になったことの一つが競技後の選手へのインタビュー。
これにはなんとも言えないストレスを感じた。

なぜだろう?
なんでそんな質問するん?
と感じたからだ。

先日、競泳女子アメリカ代表のシモーネ・マヌエル選手の記事を読んだ。アスリートが試合で負けた直後にメディアのインタビューを受けることについて、「気持ちを消化する時間を取れていないアスリートに対し、負けた直後にインタビューをするのはやめてほしい」「精神的および感情的に疲弊していることを理由に強制されるべきでない」「選手たちは全身全霊で戦っている。その時点で他に人々が知るべきことは何もない」 と。
リオデジャネイロ五輪では金メダル2個・銀メダル2個に輝き、五輪競泳の個人種目を制した初の黒人選手として注目されたマヌエル選手は、6月に米国で行われた五輪選考会では、心拍数増加や不眠症、うつ、不安、倦怠(けんたい)感に悩まされていたと告白し、「感情を持つ人間として私たちを見て」と言ったそうです。また今回のオリンピックで、体操女子アメリカ代表のシモーン・バイルス選手が優勝候補に挙げられていた複数の種目を棄権していました。
試合後のインタビューについては、テニスの大阪なおみ選手が試合後の記者会見を拒否して協会から罰金をとられた後、メンタル不全を訴えていたことも記憶に新しいかと思います。

あなたが競技を終えたばかりでインタビューを受けるとしたら、どんな気持ちになりますか?
ここで3つのインタビュー場面を挙げますので、選手としてどう感じるか考えてみてください。

インタビュアーA「今回〇メダルを必ず取ると言われていた中で〇位でしたが、終わってみていかがでしたか?」
X選手「ハァ、ハァ、ハァ…そうですね、なんとかメダル圏内にはと思っていたのですが…ハァ、ハァ、ハァ…すみませんでした…」

インタビュアーB「昨年代表に選ばれるまで大変な思いをして代表となられて、そして今日までさらに大変な思いと練習をされてきたと思いますが、その中で今日このような結果が出たことについて、どう感じていますか?」
X選手「ハァ、ハァ、ハァ…そうですね、なんとかいい結果を出そうと思っていたのですが…ハァ、ハァ、ハァ…すみませんでした…」

インタビュアーC「今日のこの結果を踏まえて3年後のパリに向けてどんなことがいかせそうですか?」
X選手「ハァ、ハァ、ハァ…そうですね、今日の結果をみて、これからですか…ハァ、ハァ、ハァ…そうですねぇ…」

3つのインタビューを振り返ると、インタビュアーAの場合、答えが難しいクエスチョンワードで即答できず困らせるパターンですね。
英語の5W1Hの拡大質問の How です。これは感情や考え方を聴くときのもので、この場面には則さないものです。
インタビュアーBの場合、質問に至るまで説明が長すぎて選手の頭に入ることが難しく、で質問ってなんでしたっけ?となりがちです。ここでのインタビューは短い質問が必要で説明は要らないでしょう。
インタビュアーCの場合、いま競技を終えたばかりなのに、3年後を今聞くの?って誰でも困りますよねぇ。

と3パターン挙げましたが、総じて「相手(選手)の立場に立っていない」ことから起きている状態ですね。
質問とは「自分が聞きたいことを聞くのではなく、相手が言いたいことを聞く」ことです。
もちろんディベートや時間や労力がかかる案件については、意見の理解を深めるために相手が嫌がることを聞くこともありますが、これは「競技後のインタビュー」です。

グッドな質問にはグッドな答えが返ってきます。
元サッカー選手の内田篤人氏がインタビューした後、「質問が適格で秀逸」「うっちーのインタビューは、サッカー選手としての経験値と、ご本人の人柄と、頭の良さが全て相まってたからこその良さだったなぁ」などの声がSNSに上がっていました。
最後は人間力ですかね。
この質問力にはいくつかのスキルが必要ですが、今回はこのあたりで。

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