2012-04-30
森本
福岡市は4月27日から公衆無線LANサービスFukuoka City Wi-Fiの提供を始めました。
誰もが無料でインターネットを接続できる環境、Wi-Fi(ワイファイ)スポットを利用できるサービスです。
無料で使える無線スポットのサービスは既にいくつかありますが、契約しているインターネットサービス(プロバイダー)がどこであれ無料で利用できるものはかなり限定されていますし、自治体として地下鉄駅内で使えるサービスを提供したのは全国初です。
いつもは持ち歩かないiPadを持ち出して、地下鉄中洲川端駅で接続してみたところ、メールの送受信はもちろん、YouTubeのビデオ視聴もそれなりの快適さでした。
市としては、観光地としての情報発信や災害時の緊急対応等を意図してのサービス提供でしょう。そんな目論見はどうあれ、このサービスはうれしく思います。
業種分類としての「サービス業」は、他の業種に含むことの困難な業種に冠された「その他」的なイメージがありますが、自治体の活動こそはサービス業という名称に相応しいものです。
究極のサービス業とも言える自治体が、その受益者である住民に対して手を替え品を替えさまざまな手段でサービスを提供する姿勢には諸手を挙げて大賛成です。
ところが、そうしたサービスを享受できない立場の住民にとっては、トータルで不利益なことではないかという議論があります。
現に私の両親はこの新しいサービスの恩恵を受けることはできません。
詳しいことはホームページで、などと言われただけで、私の母は仲間外れにされたと感じているようです。
ネットのような新しい技術についていけない、あるいは興味を持たない人とそうでない人との間に社会的な格差が生じてしまう問題、「デジタル・ディバイド(情報格差)」です。
貧富や年齢、生活環境、個人的な嗜好がデジタル・ディバイドの要因なのですが、少なくとも公的な自治体がそれを助長することに疑問を投げかける人もいます。
一部の限られたグループにのみ特別な恩恵を与えることは公的な投資として相応しくない、というものです。
趣旨には賛成しつつも、ことデジタルが話題になると、それは違うだろう、と思ってしまうのは、私の個人的な立場からかもしれません。
福岡市内に住民票のある72万世帯には広報誌「ふくおか市政だより」が毎月、配られています。ですが私の自宅には届けられていません。
市のホームページで市政だよりを閲覧できるので不要だと広報課にメールしたら、了解、お宅には来月から届けませんと二つ返事でした。
これが紙資源の節約に一役買ったなどとは思いませんが、ゴミは少しだけ減りました。
10万世帯くらいは、私と同じことが可能かもしれません。もしもそうしたらその印刷コストと配送の手間の分は別のサービスに活用できるのではないかなぁと思います。
もちろん、私の両親の家にはこれまで通り市政だよりを届けていただかなくてはなりません。
情報を得る手段の有無によって実際に生じる違いは、情報の本質でなく、それを得る手間だけであれば、自治体の新しいサービスがデジタル・ディバイドを助長する要因にはならないのでは、という気がしますし、そもそも情報技術を利用するということの目的はコスト削減であったり迅速な対応なわけですから、ことさら新しいサービスに目くじらを立てるのは本末転倒ではないでしょうか。
でも私には隠している事実があります。私の両親がデジタル・ディバイドの弱者である一番の理由は、金銭的に貧しいせいでも、自分の息子が面倒くさがりなせいでもありません。
それは、今のIT技術全般が、圧倒的に使いにくいからなのです。
できることは確かに増えたけれどもその使い勝手の悪さは、25年前と五十歩百歩だとは言い過ぎでしょうか。
冷蔵庫やガズレンジみたいには無理でも、洗濯機や自動車なみに簡単にコンピューターが使いやすくなる時代がスグにやってくるに違いないと信じていたのですが…。