2015-02-16
柿本
時間管理は大切だ。人間にとっても、コンピュータにとっても。
かつてコンピュータの世界で「2000 年問題」というものがあった。
コンピュータ内部で 4 桁の西暦を下 2 桁だけを使って表現していたとする。
たとえば 1985 年なら"85"というふうに。
1990年代末、賢い人は気づいてしまった。
「2000 年は、"00"。これは、1900 年の"00"と一致する!」
つまり、コンピュータが管理する時間が原因でシステムが誤動作するのではないか、と。
人々は恐れ、慌てふためき、銀行や会計システムの改修作業を必死になって行った(そして IT 業界は儲かった)。
その成果があったのか、一部の誤動作はあったものの、わたしたちはいまこうやって無事に 21 世紀を迎えている。
時は西暦 2015 年。賢い人はまた気づいてしまった…「2036 年問題」に。
前回の 2000 年問題は、「本来 4 桁であつかうべき西暦を、ラクをしようと 2 桁ですませた」という、いかにも人間臭いところに根本的な原因があったのだが、2036 年はそうはいかない。
実は世界中のコンピュータ時刻の基準となるシステムは、1900 年 1 月 1 日午前 0 時を起点にこれを 1 秒ずつカウントアップして管理している。
そしてそれは「32 ビット符号なし整数」という箱に収められていて、概念的には、この箱が 2036 年 2 月 6 日 6 時 28 分 15 秒に、いっぱいになってあふれてしまうのだ!
いっぱいになった箱に 1 秒足すと、それはリセットされ、0 から再スタート。
いったい、何が起きるのだろう!?
銀行の口座残高が 0 になってしまうのだろうか?
それとも 1900 年 1 月 1 日の世界にタイムスリップしてしまうのだろうか!?
似たような話は実は 2038 年にもある。
UNIX や C 言語といわれる由緒正しいシステムや言語の時刻が同じような理由から、2038 年にオーバーフローを起こすかも、と心配されているのだ。
いったいどんな恐ろしいコトが…!
しかし、ご安心いただきたい。
これらの問題はシステムを 32 ビットから 64 ビットに移行すれば解決できるのだ(箱がぐっと大きくなる)。
わたしたちは再び、IT 業界に少しだけ富を落とし、システムの改修作業を依頼すればよい(しかし、考えてみるとこれは長い年月をかけた IT 業界のマッチポンプといえるのではなかろうか)。
もっと深刻そうな別の問題もある。
未来学者レイ・カーツワイルによると、これまで人類がもたらしてきた技術的進歩は、指数関数的成長パターン(たとえばムーアの法則)に従っているわけだが、とどまるところを知らない技術革新によって人工知能が人間の知性を凌駕する「X デイ」がいつか訪れるという。
「X デイ」以降は、未来を制御できるのは人間ではなく人工知能であり、人類による歴史はそこで技術的特異点を迎える。
それは今世紀中に訪れるという。
これが「2045 年問題」である。
これを受け、ネットの住民は「人類滅亡」と騒ぎ、ホーキング博士も「人工知能は人類史上最悪の脅威」と心配し、今年の 2 月 9 日、総務省までも「インテリジェント化が加速する ICT の未来像に関する研究会」の中で「2045 年問題」を取り上げた。
わたしたち人類の未来は、いったいどうなるのであろうか?
わたしにいい考えがある。
世界中で一致団結して 2045 年が来るまえにものすごい人工知能システムを完成させ、そのスーパーコンピュータに命令すればよいのだ。
「来たるべき 2045 年問題の解決策を提示せよ」と。