スタコラ:2014-12-01

良いコミュニケーションをとりたいという思い

2014-12-01
新開

「自閉症スペクトラムの人の理解と支援~特性から考える~」というテーマの講座を受講した。

自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder:以下ASD)の理解と支援についての講義と、実際の支援者の実践報告という構成であった。
就労に関する相談業務をしている中で、職場の対人コミュニケーションに悩む方も多い。 そこで、相談者に対する理解を広げるためにと思い参加した。
実践報告では、ASDの方の就労支援についての発表があった。 その方と良いコミュニケーションをとりたいという思いから、業務改善に取り組まれた話は素晴らしかった。

自閉症スペクトラム障害は、米国精神医学会の診断基準 DSM‐5 での診断名で、2013年に改訂される前の DSM‐4 では、自閉性障害・アスペルガー障害・特定不能の広汎性発達障害などと区別されていたものである。
自閉症スペクトラム障害の特徴には、対人コミュニケーションが難しい・場面に合わせての柔軟な対応が難しい・感覚過敏などがある。

実践報告の就労支援は、お菓子工房の生地づくりスタッフAさんのサポートについてであった。
このAさんは長年この仕事を任されており、支援する職員は初めての担当である。 仕事に関して何か言うと、反論をしてくる状況だったそうである。
ここで、“穏やかな良いコミュニケーションをとりたい”という目的が生まれたようである。
しばらくAさんの仕事ぶりを見て気づいた点として、反論するということは“今までの経験を伝えることができるという強み”であるということ。 休憩になると、スッといなくなり休憩が終わってもなかなか帰って来ないなどのことが見えてきて、見通しの立たない1日のスケジュールへの不安があるのではないかと感じたとのことであった。

ASD の方の中には、見通しをたてることやイレギュラー対応がとても苦手な方がいる。 そこで、一日のスケジュールを書き出したそうである。 すると、あまりにも丁寧に作ったので、20ページ以上のスケジュール表になってしまったそうである。
イレギュラー対応をすべて書いたマニュアルを作成するのと同じなので、それは多くなるだろう。
次に、それを縮小するために、“○分になったら教えてください”“○分ミキサーを回したら報告してください”という伝える形にしたそうである。
最終的に、Aさんが時間(ミキサーを回す時間など)を記入する様式に変えたそうで、生地作成の工程スケジュールは4枚になったそうである。

この20ページのマニュアルを4ページにするために、「なぜそうなるのか?」⇒「もっと良くならないか?」⇒「工夫」をくり返していったそうである。
基本的な考え方であるが、これを実践するのは難しい。
ここでは伝えきれないが、発表者の仕事に対する熱意やAさんに対する思いには胸が熱くなる場面もあった。
また、Aさんの“今までの経験を伝えることができるという強み”を生かし、最終的にはAさんの経験から工程時間を決められるまでにできたのは素晴らしいと思った。

Aさんと“良いコミュニケーションをとりたいという思い”からスタートした結果、Aさんの能力を最大限に発揮できる環境をつくりあげたのである。
その後も、きれいな状態と汚い状態を写真で示したり、整理整頓する工夫や粉を散らさない工夫を実践されていた。
“かいぜん”のためには、その思いが大切なのだと改めて感じることができた。

スタコラ一覧