スタコラ:2020-02-03

懺悔

2020-02-03
柿本

人生で懺悔することがあります。命にかかわることです。
…心の準備はいいですか?

小学生の頃、クラスで亀を飼っていました。「いきものがかり」が世話をします。わたしもその一員でした。
亀には専用のエサを与えます。緑色の、リング状になっているエサです。亀に名前がついていたかどうか、覚えてはいません。でも、クラスみんなの大切な亀です。きっと愛らしい名前がつけられていたことでしょう、ここでは仮に亀吉とします。

亀吉はあまり動きません。だから、部屋は小さくていいのです。
カブトムシ用の小さい虫かごを水槽にした、子供ながらに考えた快適空間は、水や石や草で満たされていました。

ある土曜日、わたしは亀吉の世話係でした。エサは登校してすぐにあげました。わたしは仕事の半分は朝のうちに終わらせたのです。
その日、放課後、わたしは友達とサッカーの約束をしていました。わたしは急いで家に帰りました。
夏の暑い日でした。サッカーはとても楽しかったです。

月曜日、登校するとみんなが亀吉の水槽に集まっています。どうしたんだろう?

「亀吉が死んでいる」
亀吉はまったく動きません。夏の土日の暑さで、亀吉は干上がってしまったのです。
亀は爬虫類です。爬虫類は、自分の体温を維持できません。暑いときは熱く、寒いときは限りなく冷たくなります。
土曜日、帰るとき、わたしは陽の当たる窓際から、陽の当たらない涼しいところに、亀吉ハウスを移動すべきだったのです。

「柿本くんが担当じゃなかったのか!?」
M君が詰問します。
「ぼくが帰るときは、涼しいところにあった」
わたしは咄嗟に嘘をつきました。
わたしは怖かったのです。全ての責任が自分にあることは分かっていました。遊びに夢中になって、仕事の、もうひとつの大切な方をすっかり忘れて亀吉を死なせてしまった負い目がわたしを嘘つきにしたのです。

「じゃあ、だれがわざわざ窓際に戻したというのか!」
M君の追求はもっともです。わたしが悪いのです。
「知らない」
また、嘘をつきました…。

大袈裟ではなく、わたしはこのことをずっと隠して生きてきました。閻魔様に必ず問いただされます。爬虫類が変温動物だってことは、理科の授業で習っていたのに…。生活に役立たない知識は無意味です。

ごめん、みんな。亀吉、ごめん。

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