スタコラ:2022-06-06

台所の大型新人

2022-06-06
林田

 みなさんは料理はお好きだろうか。
 私は嫌いではない。むしろ好きだ。
 しかし料理するようになって半世紀近く。流石にマンネリ気味である。

 そんな私の台所に、最近新メンバーが加わった。

 その子との出会いは、友人の家に泊まりに行った春のことである。
 友人がその晩振る舞ってくれたのは、ビーフカレー。しかしそのカレーが、私の中の家庭料理としてのカレーの概念を変えた。
 野菜の甘さが存分に引き出され、風味がとてもいい。何より、お店で出るような、何時間も煮込んだのであろうと感じるトロトロ具合。思わずレシピを聞くと、友人宅で採れた新玉ねぎと牛肉とバターだけのシンプルなものだった。しかし、水を一切使っていないという。美味しさの秘密は、まさに調理器具にあったのだ。

 その調理器具は、【活力鍋】であった。
 活力鍋とは、アサヒ軽金属が開発販売している高性能な圧力鍋のことである。圧力鍋の存在や評判は知っていたが、蒸気機関車のような「シュッシュッ」といった音が恐ろしく感じ、全く興味を持ったことはなかった。
 しかし、友人が上手に扱っているのを見て、何よりあのカレーの美味しさが忘れられず、自宅に帰るやいなやインターネットで活力鍋を購入した。
 やはり私のように活力鍋の魅力に目をつけている人は大勢いるようで、注文後の画面には「入荷待ち」の文字。鍋が届くまでの約一か月の間、私はこの鍋を使ったレシピを夢中で集め、届く日を心待ちにした。

 そしてついに我が家にお迎えした。早速料理開始。
 鍋に食材を入れ、強火にかける。すると重りが動き始めるので、重りが揺れる程度に火加減を調節。そこからレシピにある通りの時間、煮込み続ける。
 調理時間が終わって火を止めても、鍋の中は高温のままだ。冷ますため蒸らし時間を設け、食材の旨味を引き出す。食材がゆっくり冷まされることで味が染み込みやすくなり、美味しくなるのだ。
 私が挑戦したかったのは、豚足。生豚足を買い、作った。表面はオーブンで焦げ目をつけた。コラーゲンがプルプルで表面はパリパリ。まさに焼き鳥屋で食べるあの味。大成功である。
 豚の角煮、スペアリブ、いわしの佃煮、牛すじ煮込み…どれも柔らかく美味しくできた。

 活力鍋があれば、作るのが面倒だったメニューに挑戦できる。
 長時間煮込んだあのお店の味が短時間の調理時間で味わえる。なにより燃料代の節約になる。
 新たに加わった、重くて大きい活力鍋は、我が家の狭いキッチンにはやや存在感がありすぎる気もするが、我が家の食卓と私の心に新たな風を吹き込んでくれた。
 さあ、次は何を作ろうか。

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