2016-03-28
高尾
心理学者アドラーについて書かれたこの本は、90 万部を売り上げて超ベストセラーとなり、海外では韓国で 2014年 11月発売から1年で部数はすでに 86 万部に達し、台湾でもすでに 20 万部を突破し、現在『幸せになる勇気』がアマゾンで1位となっています。
この『嫌われる勇気』、以前手に取って一読していたのですが今回あらためて熟読してみました。
アドラー心理学で面白いのは目的論という論点。
一言でいうとトラウマの否定。
これは「今」は自分の経験(過去)によって決定されるものではないとするもの。
ここは、「原因と結果の法則ジェームズアレン著」にはじまり様々な著書から「昨日までの結果が今日を創る」と納得している私にとってはなんとなく違和感がありました。
トラウマとは「心的外傷のことで、外的内的要因による衝撃的な肉体的精神的な衝撃を受けたことで長い間それにとらわれてしまう状態(ウィキペディアより)」。この説明からすると過去のマイナス部分をひきずるなということかと。
過去のマイナス経験に限定したことに言及していると考えると違和感がなくなりました。
また「すべての悩みは対人関係」であるとしています。
たとえば「劣等感コンプレックス」。
学歴に劣等感コンプレックスがある人は「私は学歴が低いから成功できない」と言う。
ということは逆に言うと「学歴さえ高ければ私を大きく成功できる」と捉える理論。
なかなか面白い(と一言で言っては失礼だが)。
研修やセミナー講師をやっている仕事柄、対話における一つ一つの言葉に注意していますが、この「劣等感コンプレックス」的発言はよく耳にしますね。
こういった発言は耳障りがいいように気を遣って発言されているようで、実は自分を卑下していることも多い。
なんでそんなに自分を卑下するのだろう。
日本人は謙遜することを大事にしていると言いますが、劣等感コンプレックス的発言は、客観的視点に欠けたジコチュー(自己中心/死語ですかね…)発言に聞こえます。
まぁ、そうはいっても人と話すなかで、前向きなことや私はコレもアレもできるとばかり言っちゃうとひかれるのでそこらあたりのバランス感覚はなくしちゃいけませんが。
また、ここには認められたいという承認欲求が潜在的意識にあります。
先ほどの学歴の話でいけば、じゃなんで学校の勉強しなかったの?と思われる。
やればできたはずと聞こえる。
この点が、「嫌われてもいいから勇気をもって」思った通りに発言することが大切ということにつながるのでしょう。
でもやっぱり人に嫌われたい人っていないですよね。
最後にこの本の中の一文を。
神よ、願わくば私に、変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とを授けたまえ。
スローターハウス5/カート・ヴォーネット