2022-05-09
大隈信夫
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は、2021年の世界の軍事支出が、前年比0.7%増加して2兆1000億ドル(約270兆円)となり、過去最高額を更新したと発表した。
この発表では、ウクライナへの侵略を続けるロシアの軍事費は2.9%増の659億ドル(約8兆4800億円)。ウクライナ侵攻に先立ち3年連続で軍備増強を進め、世界5位となっている。
一方、ウクライナの軍事費は59億ドル(約7600億円)で、約8%減となったものの、GDP比では3.2%。2014年のロシアによるクリミア半島併合後、軍事支出は72%増加した。
北大西洋条約機構(NATO)に加盟する欧州諸国の間でも、緊張の高まりを背景に軍事支出を拡大する国が増えている。
米国は1.4%減となったが、額では8010億ドル(約103兆円)と、他国を大きく引き離し、2位の中国は4.7%増の推定2930億ドル(約37兆6600億円)と27年連続の拡大、3位のインドは0.9%増の766億ドル(約9兆8450億円)。英国は3%増の684億ドル(約8兆7900億円)で、サウジアラビアに代わって4位に浮上した。
日本は541億ドル(6兆9519億円)と7.3%増で9位。伸びは1972年以降で最大となっている。
この軍拡ドミノ
は、「軍事力の増強は抑止力」との口実を背景に続けられている。
しかし、「軍拡」まして「核軍拡」は、抑止力どころか、基本は威力を示し、相手を恐れさせる
他国を威嚇する手法であり、世界の平和への貢献とは真反対の行動である。そして、しばしば攻撃の糸口として使われる場合もある。
いま、日本でも、「軍事費をGDPの2%(11兆円)」や「核兵器の保持」を主張し、憲法9条を目の敵とする勢力がある。
こうした「軍事には軍事で」とする軍事力増強による威嚇ではなく、平和憲法に基づく外交と対話を通じてこそ真の抑止力となる。
今夏の参議院選挙は、平和憲法か、軍拡による威嚇か、の選択が問われることとなる。