2016-05-23
柿本
100年以上前のアメリカの話。
コール博士という数学者がいた。
ある学会でコール博士は登壇し、黒板に簡単なかけ算を書いて、それを慎重に計算しだした。
しばらくして、その意味を理解した聴衆(数学者達)はざわめき、やがて会場は大きな拍手喝采に包まれた。
コール博士は、 が「素数」でないことを250年ぶりに証明したのだ!
= 147,573,952,589,676,412,927 = 193,707,721 × 761,838,257,287
素数とは、1 と自分自身しか約数を持たない正の整数のことを言う(1を除く)。
つまり、どの数でも「割り切れない」。
素数は無限にあるが、そのうち、
(2のべき乗から1を引いたもの)
で表されるものをメルセンヌ素数
という。
メルセンヌは 16 世紀の神学者でアマチュア数学者でもあったが、いくつか興味深い数学的研究をしている。
そのひとつが素数についての「予言」だ。
が素数になるのは、n<=257 では、n = 2, 3, 5, 7, 13, 17, 19, 31, 67, 127, 257の場合だけである。
この予言は、オイラーなど大数学者によってそのいくつかが肯定的あるいは否定的に解決された。
しかし、n=67 の場合が、素数かそうでないかは、コール博士のかけ算の結果を待つまで結果が出ていなかった。
コール博士はメルセンヌ素数の一つを手計算で否定的に解決したのだ!
「素数なんて私たちの生活に何の関係があるの?」とお思いかもしれないが、実は大いに関係している。
コンピュータで使われている暗号システムは、「とても大きな数を素数で割り切る」ことによって成立している。
あてずっぽうな計算によってなかなか導きだせない大きな数は、暗号のカギに使えるのだ。
博士の没後、その功績を称えて栄誉あるコール賞
が作られた。
これは、数学会におけるノーベル賞といわれるフィールズ賞
に比肩するくらい立派な賞だ。
フィールズ賞といえば、数年前フェルマーの定理を完全解決したワイルズが受賞している。
そうそう、フェルマーの定理
も美しい定理であった。
フェルマーの定理: となる n は、n>=3 の場合、存在しない。
※n=2の場合は存在して、三平方(ピタゴラス)の定理
「どれどれ、日本人でコール賞をとった人がいるのかな?」
と、興味本位で調べてみた。私は数学的ミーハーなのである。
いたいた…志村五郎先生…この名前…なんか聞いたことあるな…前述した、フェルマーの定理を解決したワイルズがその論文の中で使った、志村・谷山予想
の志村センセイではないか!
「すげーっ!」(乱暴な言葉遣いをお許しください。心の声です)
そして、よくよく調べてみると、ワイルズ本人も、コール賞、もらっている!
「すげーっ、すげーっ!つながってる~!」
…とある深夜、私の中で数式をほとんど使わない数学的感動体験が一段落した。
ふうぅっ。
この感動を誰かに伝えなければ…
(伝わりました?)