2019-12-02
大隈昭子
子どものいじめ、児童虐待死や教育現場の体罰を無くし、子どもの命と人権を守る社会に
子どもの基本的権利を保障するための「子どもの権利条約」が1989年の国連総会で採択されて、この11月で30周年を迎えました。
日本がこの権利条約を批准したのは、5年遅れの1994年の4月、世界で158番目でした。
子どもの権利条約は、18歳未満を子どもと定義し、「保護の対象」ではなく「権利を持つ主体」として、①生存 ②発達 ③保護 ④参加の4つの柱で権利擁護に必要な具体的な事項を規定しています。
第3条では、「子どもの最善の利益」として、第1項に「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と謳われています。
ところが今、胸が締め付けられるような事件が日々報道されています。
「パパとママにいわれなくてもしっかりとじぶんからもっときょうよりかあしたはできるようにするから
もうおねがい、ゆるしてください
おねがいします…」
と切々とした反省文を残し、父親からの虐待により亡くなった5歳女児。学校のアンケートに「先生どうにかなりませんか」と助けを求めたのに、父親の暴行によって死亡した小学4年生の女児。なぜ、このような悲惨な事件が起きるのか、心が痛みます。
厚生労働省が子ども虐待による死亡事例等の「検証報告書」に基づくものとする発表では、虐待死は、「ここ10年間で年間70~90件の間で推移」としていますが、この「報告書」がすべての虐待死を網羅しているとはいいにくいとの見方もあります。
こうした背景に「“しつけ”のためには体罰が必要」とする意見や、中学・高校部活動での体罰の実態、地域のバレーボール部で発覚した「指導者を訴える行為をしない」とする監督の体罰を容認して隠蔽する“誓約書”の強要など、一部に「体罰」を容認する雰囲気もあります。
「こどもの権利条約」が国連総会で採択されて30年、日本が批准して25年。
子どもの人権を守るための措置はすすめられたのでしょうか。
子どもの権利条約を批准する197加盟国の取組にも学びつつ、子どもの最善の利益を守るために、具体的事項を検証し、具体化し、子どもの命と人権が守れる社会の実現は急務です。
“親の体罰を禁止する改正児童虐待防止法”が来年4月より施行されます。