スタコラ:2014-07-07

わすれっぽさとの戦い

2014-07-07
柿本

人間、誰しもある年齢層になってくると忘れっぽくなるものだ。
しかし、大事なことをすっかり忘れていては信用にもかかわる。
「わすれっぽさを解消する、うまい方法があるのではないか」私はそう考えた。

ある日の会議の途中、重要な案件が提示された。これは忘れてはならない。
私はそっと、腕時計を右に付け替えた。
「右時計の違和感」それは私に、重要案件のことをきっと思い出させてくれるだろう。

しかし、人間は、慣れる。 この手を何度も使っていては右時計は私の日常となり、私は違和感を覚えなくなるだろう。
そう考えた私は、そっと左の靴下をくるぶしまで下ろした。
「ずり落ちた靴下」それは私に、「右時計の違和感」を思い出させるだろう。

しかし…わすれっぽい私が靴下のことも忘れてしまったら…私はさらに安全策を講じることにした。
「自分が忘れても他の人に指摘してもらえばよい」のだ。
私は思い切ってシャツをズボンから出し、おなかの前にすこしだけぺろんと出して再びそれをしまいこんだ。
これで、私が歩くと人々は私のおなかに注目するだろう。 やさしい人は声をかけてくれるかもしれない。
こうして「おなかペロン」は、私に「ずり落ちた靴下」を思い出させ、「ずり落ちた靴下」は「右時計の違和感」を想起させ、無事私に「重要案件」を思い出させることになるはずだ。
めでたしめでたし。
……いや、待てよ、こんなだらしない格好をしていては私の人格が疑われることになるのでは?

「メモをとりなさい」

多くのみなさんの、心優しいアドバイスが聞こえてくる。
いいや、みなさんはわかっていない。 そんなことができるなら私は、はじめからそうしている。
メモをとるということすら忘れてしまう人間の、精神の弱点を肉体がいかに克服できるか?というギリギリの攻防のことを私は言っているのだ。

さて、今日も新しい戦いをはじめよう。

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