スタコラ:2016-09-12

ナシもカキも放生会

2016-09-12
森本

本日9月12日より、博多三大祭りの一つ放生会(ほうじょうや)が始まります。
全国的な知名度は、山笠どんたくよりも低いのですが、トータルの人出は最大で、並ぶ露店の数も500軒を超える九州随一の秋祭りです。
筥崎宮の参道から徒歩5分の距離に住んでいる私は、子供の頃からこの祭りが好きで、一年の中でこの一週間が一番ドキドキした日々でした。
そんな放生会について、あれこれ思いつくことを書くことにします。

筥崎宮のことを「はこざきさん」と親しみを込めて呼びます。 これは櫛田神社を「おくしださん」、共通語でも稲荷神社を「おいなりさん」と呼ぶのと同じです。
普段はただ広く長いだけの「はこざきさん」の参道と脇の空き地に露店がびっしりと並びます。 その数も以前は700軒だと言われていました。
普通の会社勤めなのに、なぜかこの時期だけ露店を出す家庭が近所にありました。
そんな人もいないとあんなに多くの店は出せないのかもしれません。

放生会は山笠やどんたくと違い、参加する祭りでも見学する祭りでもありません。
神事は当然行われているので見学できないわけではないのですが、多くの人にとってはもっぱら、露店を味わう祭りです。
正しいショッピング方法としては新ショウガや掘り出し物の陶器を選ぶことです。 さすがに今の時代、いつでもどこでも手に入るものなのでこれらを並べた店はメインストリートから外れています。
祖父に連れられていく、陶器売りばかりが密集した一帯に入るのは子供心に退屈でした。
子供の頃には、お化け屋敷オートバイショーこそが放生会のメイン会場でした。

放生会でしか目にすることのない露店の一つに見世物小屋がありました。
おどろおどろしい看板の中では、ヘビ女や三つ目の子供や火を噴く人がいました。
見世物小屋のことは皆そのままに「みせもん」と呼んでいましたが、祖父と祖母は「たかもん」と呼んでいたのを思い出します。
お菓子の「通りもん」はたぶん通りを練り歩く人達のことで、料理の出前の容器を「さげもん」、カーデガンを「ひっかけもん」なんて言い方するのは祖父と祖母の世代までだったろうと思います。

露店の種類も時代によって変化がありました。
かつてはゴーカートパチンコがありました。
テレビゲームが一世を風靡した時には、喫茶店にあったスペースインベーダーのゲーム機(テーブル)が何十台も並んだりしました。
たぶん今の時代、動物虐待や環境破壊とかで非難されるであろう露店も数多くありました。
そうした一種の「怪しさ」や「胡散臭さ」に触れることも露店の魅力の一つであるように思うのですが、異見も多いと思います。

「梨も柿も放生会」
これは一種の決まり文句みたいなものです。 ネットで調べてみると「放生会に行けば秋のものは何でも揃うよ」の意味だという記述がありました。
子供同士の言い争いの場面で「ナーシもカーキも放生会」と使ったし、子供でなくとも、ほっと一息ついた時にも口にする文句でした。
同じような子供のハヤシ文句に「姪の浜から雨の降る」もあったのですが、検索しても見つかりません。 いずれ、私がちゃんとウェブ上で説明したい、なんて考えています(笑)。

「敬老の日」がかつて9月15日だった頃、この日は放生会期間中の真ん中の日でもあったので、毎年、一番賑わっていたのは9月14日の夜から15日にかけてでした。
今年の敬老の日には放生会は終わってしまいます。
放生会へ行く(筥崎さんへ行く)のはバスか地下鉄を利用することをお勧めします。

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