スタコラ:2018-10-15

月にいくってよ

2018-10-15
柿本

大手アパレル小売の社長が、民間人で初めて「月旅行」をするという。スケールの大きな、夢のある話ではないか。なんでも、アーティストを何人か連れて行くらしく、いま絶賛募集中だという。
さっそく、私も押し入れにしまっておいたフォークギターを取り出して、アーティストの仲間入りを果たすべく練習を開始した…。

ま、それはさておき。私も月が好きだった。月というより宇宙が。宇宙のなかの地球という小さな星の中に、米粒のような縮尺で生きている人間の営みを考えると、日頃の悩みがなんだか、馬鹿らしくなってくる。

学校や職場、家庭そして恋人関係。目減りしていく銀行残高、激しく変動ビットコイン、塩漬けになったあの株のこと、子供の教育、家のローン、身内の健康そして将来への不安。そもそも心配、年金問題、世界の平和とテロ・戦争、いろんな宗教、飢餓、イジメ、どんどん出てくるハラスメント、LGBT、TPP、環境問題、原発。人間がAIに取って代わられる2045年問題など。

なぜだ?なぜ、人は悩む?
ズレか。言葉のズレが問題かっ?

言語を駆使して我々は世界を記述する。コトバという記号を使って、ものの本質があるのかないのか、分からないまま、各々が生きていくうちに獲得したそれぞれの言語体系で共通の部分を舐め合い、ぼんやり理解し、折り合いをつけて今日も明日も生きていくしかないではないか。どんなに仲の良い二人でも、根本的には他者なのだ。

そして、悩みの源泉はたいてい、人間。周りとうまく伍せる人もいれば、不器用な人もいる。
しかし、月から見れば、どれもこれも、きっと小さな米粒だ。実際に月に行かずとも、想像しただけでも(行きたいけど)、我々の限りない小ささがわかる。
「高みに登る」というのは、きっとこういう感覚をいうのだろう。

宇宙のスケールで考えると、大抵のことは問題なくなる。だから、私は「大きい」ものに憧れる。
しかし、一方で私は人間の「小ささ」も好きである。人間の弱さ、小ささ、自分に勝てないどうしようもなさ、時代の変化に取り残された昔気質の男…。どれも、私の創造力をかき立てる。制約があればあるほど燃えるのは、アーティストの性(さが)である。
…あっ、やはり、私はアーティストらしい。ふふふ。さあ、全ての些末なことから離れて宇宙に飛び出し、歌を作ろう。

社長、ええ仕事しまっせ!
オファー、お待ちしとります!

もう、曲名は決まっとるんです。
♫「富の集中問題~月より愛をこめて」

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