2012-10-29
新開
先日、ウィニコットがひらく豊かな心理臨床という本を読みました。
ウィニコット(1896年―1971年)はイギリスの小児精神科医です。
ほどよい関係性について母子分離を通して論じられていました。
母子分離を「一人でいられる能力」とし、「二人でいながら一人、一人でいながら二人」というような体験が連続してあることが重要だということです。
どのようなことかというと、
「母親と子供が同じ空間にいるのだけれど、母親は家事をしており、子どもは一人で遊んでいる。
一緒にいるけれど、二人でいることを忘れている。
そして二人でいることを忘れていない。」
このような経験が続くことで、人と人とがほどよく共にいられるようになるということのようです。
先日担当させていただいた職業訓練のクラスで、「子どもが小さい場合、どのように働いたら良いのか?」ということが話題になりました。
これは、子どもが小さいという条件だけで考えるのは難しく、それぞれの条件によって選択方法は異なります。
ですが、ほどよい関係性については、意識しておくと良いのではないかと感じました。
昨日、林文子横浜市長の講演を聞かせていただきました。
その中で、ダイエーの会長時代のエピソードとして、28年間パートでずっとダイエーで働いている女性の話がありました。
「その女性は子供が小さい時に、
『何か大変なこと(災害など)があった時には、お母さんは大きなオレンジのマーク(以前のダイエーマーク)のある建物の中にいるからそこに来てね。
お母さんは必ずそこで働いているから安心してね。と言って子育てをしました。
子供二人は、ダイエーに育ててもらったと思っています。』と言われました。」
とおっしゃっていました。
その母親は、子供に自分の中に母親のイメージを持つことをしっかり教えられたのだと感じました。
子どもが母親(母親に限らない養育者も含む)を自分の中にしっかりイメージできるように導くことが、ほどよい関係性のとれる力を育むのではないでしょうか。