スタコラ:2024-10-28

マクドナルドのサラダ現象

2024-10-28
白水

コーチングをやっていると、クライアントさんは
「〜ということなんですけど、どうしたらいいですか?」
のような感じで相談をしてきます。

でも「では、こうしたらいいですよ」というアドバイスは
コーチ側からはほとんどしません。

どうするのかというと
「あなたが、悩んでいる原因は何なのでしょうか?」
のように、相手に質問をして
相手の中にある答えを見つけるサポートをするのです…

などと、コーチングの本には
書かれていたりします。

が、僕は、長くコーチングをやっていて
「相手の中の答えを見つけるのではない」
ということが
はっきりとわかりました。

ならば、会話の中でアドバイスもせず
答えも見つけず、コーチは一体何をするのか?

結論からいうと
「相手が仮説を立てるための手助けをする」
ということになります。

要は、相手はこれから行動するにあたって
仮説をつくれないので、何をしたらいいのかわからず
行動ができないのです。

よいコーチングは、よい仮説をつくりだします。

それは、魅力的なもので、すぐに行動したくなるものであり
かつ、その仮説に沿って行動してみると
1度にいくつものことがわかってしまうようなものです。

そんな仮説をつくるための
いくつかコツのようなものを
僕のコーチングの経験からお話しします。


仮説を鍛えるための秘訣:人に話すことの重要性

仮説を立てる際、
まちがいなく最も有効な方法は
「人と話すこと」です。

人に自分の仮説を話すことで
驚くほど新しい視点が生まれ
自分だけでは思いつかない
「ジャンプする仮説」が出てくることがあります。

これなどは、コーチングがすごく機能する例です。

自分の発想の枠を超えた突飛な切り口が
他者の意見から生まれるので
「なるほど、そんな考え方もあるのか」
と感心する瞬間が訪れることがよくあります。

しかし、その反面、誰に話すかという
相手(=コーチ)選びは極めて重要です。

ここで失敗すると、仮説が混乱
、誤った方向に導かれる可能性があります。


仮説を話す相手選びのコツ

相談相手の選び方は
本当に慎重であるべきだと思います。

僕が避けるべき相手と考えるのは、
「これってどう思う?」
と尋ねたときに、即座に
「これが正しい」
と断定的な返答をする人です。

このような人たちは
自分の意見を押しつけることに終始してしまい
真に有効な仮説を得ることができません。

逆に、良い相談相手というのは
まず状況を丁寧に聞いてくれる人です。

「これはこういう状況なの?」
「もっと詳しく教えてくれませんか?」
などと、興味を持って
共感しながら掘り下げてくれる人です。

そういった人々と話すことで
仮説は磨かれ、飛躍することができます。

たとえ、自分の中に答えがありそうに見えても
その答えをすぐに引き出すのではなく
しっかりと時間をかけ
共感を伴った対話が
豊かな仮説を引き出します。

実際、そうでなければ
話す意味はあまりないとおもうのです。


複数の仮説を用意する理由

仮説を他人に提示する際に気をつけるべき
重要なポイントの一つは
「一つの仮説に絞らない」
ということです。

「この仮説どう思う?」
と一つの選択肢だけを示すと
相手も答えづらくなり
返ってくる意見も偏りがちになるのです。

そこでお勧めするのは
必ず複数の仮説を提示することです。

たとえば、ウェブサイトのデザイン案を考える場合
A、B、Cの3つの案を用意し
それぞれを比べてもらうのです。

しかし、ここでも重要なのは
どれが良いかを尋ねるのではなく
「どれが一番ダメか」と尋ねることです。

これは、とても重要なので、もう1度いいます。

「どれが良いですか?」
と聞いてはいけません。

「あなたなら、まず最初に
どの選択肢を消しますか?」
と、どれが、まず最初にダメなのかを
質問してください。

これが意外にも効果的な質問法であり
選択肢を絞り込むのに役立ちます。

この「ダメなものを落としていく」アプローチは
単に相手の感覚に頼るのではなく
自分の仮説の弱点を見つけるのに
とても役に立つ方法なんです。

仮説を立てる際、自分ではどうしても
「これが最善だ」と思い込みがちで
良い部分ばかりに注目してしまいます。

ですが、他人に「ダメなところ」を指摘してもらうことで
自分では気づかなかった
欠点や改善点が浮き彫りになります。

これを繰り返していくと
仮説が一層強化されていくのです。


マクドナルドのサラダ現象に学ぶ

ここで、よく知られる
「マクドナルドのサラダ現象」
を紹介します。

これは、マクドナルドで
お客さまアンケートの質問で
「どんな商品が欲しいですか?」と聞くと
毎回のように「サラダ」が上位に来るにもかかわらず
実際に商品化してみると全然売れないという現象です。

つまり、聞かれた人は
「健康に良い選択肢」として
サラダを選ぶのですが
実際に購入行動に移す際には
選ばれないという矛盾が生じます。

これと同じことが
仮説の検証でも起こるんです。

人に「どれが良いと思う?」と尋ねても
彼らが返す答えが必ずしも本心とは限らず
その結果が実際に役立つとは限らないのです。

これを避けるためにも
「どれがダメか」と聞くことが大事なのです。

そうすることで
相手の率直な意見を引き出すことができ
より現実的で効果的な選択肢が見つかります。


仮説は仮説にすぎない:最後に残るものは何か

もちろん、最終的に残る仮説が
必ずしも成功するとは限りません。

仮説はどこまでいっても仮説であり
確実な正解ではないからです。

しかし、僕の経験上、

「ダメなものを絞り込んでいった結果 最後に残った仮説」
は意外と成功率が高いことがわかっています。

この手法は、仮説を立てる上で非常に有効ですし
個人的にも何度も救われてきました。

一方で、「これが一番良い」と
言われたものをそのまま採用すると
結果的に失敗することが本当にとても多い。

これこそ、マクドナルドのサラダ現象と同様の現象です。

だからこそ、慎重に仮説を立て
他人の意見を活かしながらも
最終的な判断は自分自身で下す
必要があるとおもうのです。

感情的には自分のアイデアに
固執したくなることもあるかもしれません。

でも、他人の意見を上手に取り入れることで
より強い仮説が生まれます。

「どれがダメか」という視点で
仮説を練り直すと
成功の確率はぐっと高まります。

ぜひ、この方法を試してみてください。
あなたの仮説が、驚くべき飛躍を遂げると思いますよ。

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