2015-02-02
大隈昭子
私は、20歳で就職し60歳の定年を迎えるまでの40年間、保育や福祉の分野で働き続けることができた。
初めての職場が保育園だったことも幸いしているのかもしれない。保育園で働いていたとき、子どもたちの成長に日々感動し仕事に生きがいを感じていた。
結婚し、子どもが生まれてからも、働き続けることと子育ての両立は、実に多くの人たちからの学びと支えによってこそ、成り立ってきたと感謝している。
定年後の今、これまでの恩返しのつもりで、社会保険労務士としての業務に取り組んでいる。
特に、仕事と子育ての両立支援をキーワードに、いろんな事業所を訪問しながら、制度の有効活用を呼び掛けている。
私の現役時代には、なかった制度である「育児介護休業や短時間勤務制度」「看護休暇や介護休暇制度」などがある。
さらに、育児介護休業制度を利用する労働者に対する休業中の給与保障(育児介護休業給)や育児休業中の社会保険料は、労使とも免除されるようになり、昨年の4月からは、産前産後休暇中の社会保険料も免除の対象となった。
しかも、これらの制度を活用した事業所には助成金の制度も設けられている。
多くの事業所で、このような制度が周知され、活用することで、よりよい人材の定着がはかられるという制度もある。
ところが、昨年12月こうした制度に水をさすような厚生労働省の調査結果が発表されショックを受けている。
それは、「平成24年地域児童福祉事業等調査の結果」である。
この調査結果では、保育所への待機児童問題が深刻で、育児休業を早めに切り上げざるを得ない実態が示されている。
認可保育所を利用している児童のうち、「希望する時期までに入所できた」のは、86.4%(平成21年は、88.2%)だった。
このうち「希望する時期より早めた」のは、4.1%(平成21年は、3.5%)で、3年前と比較して希望する時期に入所できたは、1.8ポイント減少し、希望する時期を早めたが 0.6ポイント増加している。
そして、希望する時期より保育所への入所を早めた理由として「育児休業中であったが、その時期でないと保育所入所が困難になりそうであったため、育児休業を切り上げた」との回答が最も多く 50.9%(平成21年は、37.6%)となっており、前回比で 13.3ポイントも増加していることだ。
育児休業の取組を推進するだけでは、仕事と子育ての両立支援策にはつながらないという実態に、かつて、先輩方が「ポストの数ほど保育所を」と女性が働き続けるために取り組まれたとの話を思い出した。