スタコラ:2022-12-26

今年の漢字『撼』

2022-12-26
大隈信夫

 私は「今年の漢字」を『撼(ゆるがす)』とした。
 これは、例年 12 月、日本漢字能力検定協会が主催し「今年の世相を表す漢字一文字」の発表に倣って、私が独断で決めている。

 この漢字と決めたのは次のような理由からである。

 撼したもの第一は、参議院選挙最中に、安倍元首相が暗殺された事件は日本中に衝撃を与えた。言論戦のさ中に、暴力による封殺、しかも、元首相で現役の政治家が暗殺されるという事態に、日本だけでなく世界中に衝撃を与えた。
 さらに、この事件から、その後、反社会的勢力ともいわれる旧統一教会と政界、特に自民党国会議員や地方議員などが取り込まれてズブズブの関係を続けている実態が明るみになり、国民の批判の声が広がった。
 マスコミでは連日、旧統一協会が正体を隠して経済界や学者を取り込むための「日韓トンネル推進」やいくつのもダミー組織での正体隠しの実態、家庭を崩壊させられた証言、「二世信者」の人生をめぐる過酷な実態や人権無視の違法な「養子あっせん」など驚くべき実態が次々に明らかになり、報道され続けている。
 しかも、底知れぬ関係が発覚した後も開き直りやだんまりを決め込み、反社・旧統一協会との醜い関係に固執する姿勢をとる政治家に対して、日本をどこに向かわせようとするのかとの厳しい批判が高まっている。
 こうした国民的な批判の高まりの中で、「統一協会被害者救済法」が成立したが、これは、問題解決の始まりの一歩であり、真の問題解決のためには、反社・旧統一協会の本質とそれに群がる政治家の実態について、さらなる追及が求められている。

 撼したもの第二は、スポーツ分野。サッカーワールドカップで日本のチームが、強豪国のドイツ、スペインに勝利し、ベスト16に「ブラボー」。深夜に放送された試合にもかかわらず、サポーターだけでなくにわかファンまでもが沸き立った。
 スポーツ紙では、「ドーハの歓喜」の見出しと「ドーハの奇跡」の見出しが躍り、29 年前の「ドーハの悲劇」と絡めた報道や森保監督の采配には「手のひら返し」の評価と批判が論じられた。
「惜しくもベスト8には届きませんでしたが、夢や希望が持て、日本中を明るく元気にしてくれた」、4年に一度だけを40年以上続けている『年季の入った』にわかファンは、報道で取り上げられた「ゲーム終了後の日本人サポーターのゴミ拾い」について、「ある問題では後進国と言われている日本ですが、(この行為)は先進国です」と誇らしげだ。
 プロ野球東京ヤクルトスワローズの村上宗隆(22 歳)が5打席連続本塁打、史上最年少3冠王、日本選手最多 56 本塁打など神がかり的な大活躍を、「神様」と称する愛称「村神様」は、流行語大賞に選ばれたことも記憶に新しい。

 撼したもの第三は、円安や物価高が相次ぐ中で国民生活が厳しくなっている。
 11 月の全国消費者物価指数(2020 年=100)は、価格変動の大きい生鮮食品をのぞいた総合指数が 103.8 で、前年同月より 3.7 %上がった。上昇率は第2次石油危機の 1981 年 12 月以来、40 年 11 か月ぶりの大きさとなり、生鮮食品を除く食料が 6.8 %、特に、食パンは 14.5 %、食用油は 35 %と生活を直撃し、エネルギーは、高止まりしているガソリンが 1.0 %下落したものの、都市ガスは 28.9 %、電気代が 20.1 %大幅な値上がりに、「給料は上がらず物価だけ上がる」と庶民の悲鳴と政府の無策への批判が聞こえてくる。
 ところが、さらに撼がす事態は、平和憲法を踏みにじり国会にも諮らない立憲主義を破壊する敵基地攻撃能力を含む「安保3文書」を閣議決定し、「戦争に結び付く大転換」をすすめようとしている。
 その第一歩として、自民党は、違憲の大軍拡のために5年間に 43 兆円もの大軍拡初年度として来年度 10 兆円を超す大軍拡予算案を閣議決定し、その財源として、言語道断の大増税や復興特別所得税からの転用などはもってのほかであり、国民からの批判が相次いでいる。

 こうした、2022 年最後の最後まで国民を撼す事態から、今年の「世相を表す漢字一文字」を『撼』とした。

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