2016-01-04
大隈信夫
2016年の干支は、“丙申”(ひのえさる)の年。
丙申
の丙は、太陽の火。
「物事の本質が明らかになる」の意。申は、「果実が完熟に向かう」の意とされている。
昨年は、乙羊
(きのとひつじ)の年。
「障害が強く苦労する年であるが、それに屈することなく弾力を保ち、繁茂する枝葉に昧くなることなく、枝葉は刈り取り、しっかりと根固めをすべき年」といわれた。
私は、そんなことも考えることなく穏やかに新年を迎え、来し方を振り返り「何のために、何を課題に、自分らしく年を重ねるのか。」と、のほほんと新年を迎えていた。
しかし、それは、9月19日の参議院本会議における強行採決に至る一連の「安保法制」をめぐる国会の審議を通じて、立憲主義と民主主義の危機に直面し、そんな悠長な気分ではいられなかった。
2015年は、新年早々、安倍内閣は、「集団的自衛権」を含む「安保法制」を5月の連休明けの通常国会に提出する意向を表明し、その後、自民公明の与党協議と閣議決定をすすめ、通常国会を戦後最長の95日間も延長し、9月の参議院での強行採決に至った。
この「安保法制」について、6月4日、衆議院憲法審査会では、3人の憲法学者がそろって、「憲法違反である」と意見を述べた。
とくに、自民党が推薦した早稲田大学法学学術院の長谷部恭男教授までもが、「憲法違反」と明確に指摘した。
しかし、安倍内閣は聞く耳を持たなかった。
こうした、立憲主義の根幹を揺るがす事態に、憤りと危機意識を覚えた。
しかも、小選挙区制による議席配分の歪みの上にある多数議席
での強行は、民主主義を蹂躙する事態であった。
一方、この「安保法制」に反対し、連日、国会周辺での抗議デモも行われ、とくに、政治に無関心といわれてきた青年や学生、若いママさんなど、新たな動きが澎湃として湧き上がっている。
2016年は丙申の年。まだ完熟ではないが、形がだんだんはっきりし、実が固まっていく成長段階の年だと言われる。
2016年は、国の根幹をなす憲法にどう向き合うのかが、国民ひとり一人に問われる年となる。