2014-06-23
大隈昭子
今国会で、「過労死等防止対策推進法」(超党派による議員立法)が成立しました。
2002年に、「karoushi(過労死)」が英単語として登録され、国連の社会権規約委員会は2013年に長時間労働などが原因の過労死や自殺について、日本政府に懸念を示し、対策を講じるように勧告しました。
厚生労働省の発表によると、2012年度に過労や仕事のストレスから脳・心臓疾患を発症し労災認定を受けた人が、前年度の1.5倍の475人。
3年連続で過去最高を更新し、死亡者は123人にのぼりました。
さらに、未遂を含む自殺者は93人と、前年度より27人増えてこちらも過去最高となりました。
こうした実態を踏まえて、今回の法案は過労死や過労自殺について、業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患や精神障害を原因とする死亡や自殺などと定義。
過労死対策は、国に責任があることを、初めて明記しました。
さらに、過労死等防止法案は、過労死の実態の調査、防止策を求め、地方公共団体や事業主も協力するように促しています。
今国会でのこの法案の成立によって、過労死を防止するための体制を整え、過労死防止のための施策の充実、早急な推進が期待されます。
ところが一方では、今国会で審議が取り沙汰されていたのが「残業代支払いなどの労働時間規制を適用しない制度」(ホワイトカラー・エグゼンプション)。
対象は一応、『年収1000万円以上』とし、仕事の範囲が明確で高い職業能力を持つ労働者に限定すると説明されていましたが、現行の一日8時間、週40時間の労働時間制度の大原則を突き崩し、「残業代ゼロ」制度を導入しようというものです。
まさに「過労死等防止法」とは全く逆の立場で、長時間労働のひどい状態で働かせているとして社会問題化した「ブラック企業」を免罪するようなものでした。
さすがに、この政府の動きに対して労働界はもちろん、サラリーマンをはじめ反対する世論の前に、審議入りさえできませんでした。
しかし、政府は断念したわけではなく、次の国会にも上程するような報道もあります。
国会の動きを知らないまま過ごすと、いつの間にかこんな悪法が成立するかもしれません。