2015-11-30
大隈昭子
「介護報酬の減額改定によって年間1000万円以上の減収になり大変です」
「処遇改善給付金を入れても、800万円以上の減収です」
何人もの介護事業所の施設長さんや事務長さんからお聞きしました。
今年度の介護報酬改定は、介護事業所に深刻な打撃をあたえています。
「介護離職ゼロ」は、安倍政権の目玉政策「新3本の矢」のひとつです。
その内容は、特別養護老人ホームの入所待ちの高齢者が50万人を超すと言われる中で、従来の在宅・施設整備計画によって当初、2020年代初頭に受け皿を約34万人増やすとした計画に6万人程度上乗せして、40万人増に変更するというものです。
親などの介護のために仕事を辞めざるをえない約10万人の介護離職者、その数倍と言われる「離職予備軍」の深刻な現状を打開する展望は見えません。
さらに深刻なのは、介護現場の労働条件や職場環境の問題です。
他産業の労働者の平均賃金よりも10万円も低いと言われる中で、介護現場で働く職員の確保が出来ず、施設建設のメドがたっても開所を断念するケースさえ出ています。
ある施設では、
「政府は、介護職員の処遇改善と言いながら介護報酬を切り下げる。
これで、どう処遇改善をすれば良いのか」との声も聞こえてきます。
また、厚生労働省は、2025年に介護労働者が37.7万人不足すると推計し、人材育成を図るとしています。
しかし、実態は、劣悪な介護現場が敬遠され、介護現場の働き手を養成する介護福祉士養成校への入学希望者が減っています。
そのため、介護福祉士養成校の募集停止が、相次ぎ、最も多い時で(08年)434校あった養成校が、今年度は379校に減っています。
これでは、介護現場の働き手不足の解消どころではありません。
介護職員の処遇改善をはかり、福祉や介護の分野で生きがいを持って働き続けられるようにするためには、介護報酬を元に戻し、さらに引き上げをはかることこそが求められています。