2026-03-30
柿本
公益通報は大切だ。不正を許してはいけない。
それはよくわかる。個人の正義感は、私たちの社会を支える一番大切な根っこだ。
平気でルールを破る人たちと一緒に、知らぬ顔をして暮らしていくのは、誰だって苦しい。
けれど、もし組織の中で「悪い慣習」が当たり前になっていて、一部のメンバーが順番にその役を回しているような状況だったらどうだろう?
いま声を上げて、その担当者を責めることだけが、本当に正しい解決なのだろうか。
過去の悪事をすべて暴き立てることだけが、私たちが目指すべきゴールなのだろうか。
「そんなことをしたら、会社の評判はガタ落ちだ。新しい人も入ってこなくなるし、組織がつぶれてしまう。やめてくれ!」
現場からは、そんな切実な叫びも聞こえてくる。
「悪いのはごく一部の人たちだ。真面目に働いている社員やその家族には、何の罪もない。そんな人たちまで不幸にして、それが本当に正義と言えるのか?」
…そんな反論に、私たちはどう向き合えばいいのだろう。
確かに、正義の名のもとにすべてをなぎ倒してしまえば、守りたかったはずの平穏な日常まで壊れてしまうかもしれない。
ここで考えたいのは、組織を一気に作り変える「魔法」を探すのではなく、「世代交代」という穏やかな新陳代謝に希望を託すことだ。
不正を告発することは、誰かを罰して終わりにするためのものではない。
むしろ、これから新しく入ってくる若者たちに「この場所では、汚れた手で仕事をしていかなくていいんだよ」という安心な未来を手渡すためのバトンタッチなのだと思う。
新しい価値観を持った世代が少しずつ増え、かつての「おかしな当たり前」が、いつの間にか「遠い昔の困った笑い話」に変わっていく。
古い空気を外に出し、新しい風を丁寧に入れ続けていく。
そうして組織の「血」をゆっくりと入れ替えていくプロセスこそが、今を生きる人々を守りながら、組織を再生させる有効な道ではないだろうか。
今日、種をまいたからといって、明日すぐに花が咲くわけではない。
染み付いてしまった考え方や習慣を洗い流すには忍耐がいる。
変化には時間が必要なのだ。
私たちは、勇気を持って声を上げた人を孤独にしてはならない。
同時に、組織が改善していく歩みを温かく見守る余裕を持ちたい。
本当の正義とは、一瞬の断罪にあるのではなく、長い時間をかけて「誠実さが報われる場所」を育て直していく、その粘り強い優しさの中にこそ宿るのだから。
✴︎作者注:この話は、ウチ(ビジネス総研)のことじゃありませんからね・・・笑